主な耳の病気

耳垢

耳垢腺や皮脂腺からの分泌物、外部のホコリ、古くなった皮膚などが混じったものが耳垢です。カサカサした耳垢とべたべたした耳垢がありますが、遺伝で決まり、どちらも問題はありません。人には自然に耳垢を排泄する機能(自浄作用)があります。しかし、耳かきをして耳の奥の方に押し込んでしまったり、水泳や洗髪の際に耳垢が水分を含んでしまい、外耳が塞がってしまうこともあります。じめじめした耳垢の人は自分で掃除がしにくいこともあります。そのような場合は、耳鼻咽喉科を受診し、専門的な耳掃除をしてもらうようにしましょう。

外耳炎

耳の入り口から鼓膜までの通り道を外耳道と言います。細菌・真菌などの病原菌によって感染し、炎症を起こす病気です。耳かきをしすぎたり、耳をいじって傷つけてしまうことが原因であることが多いです。

耳に痒みがある、耳漏が出る、耳が痛い、詰まっているような感じがする。このような症状が見られたときは、外耳炎を患っている可能性があるので、お早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。

急性中耳炎

急性中耳炎は1~5歳くらいのお子さんに多く見られる耳の病気です。耳と鼻をつなぐ管を耳管と言います。お子さんの耳管は短くて水平に近く、鼻や喉の奥に溜まったウイルスや細菌が中耳に入り込みやすい構造になっています。そのため、細菌などが増殖して中耳に炎症を引き起こしやすいのです。主な症状は、耳の痛み、耳が聞こえにくくなる、耳の閉塞感、耳漏(耳垂れ)、発熱などです。

小学生以上のお子さまならば、耳の痛みや違和感を自分から訴えてきますが、症状を伝えられない乳幼児の場合は「しきりに耳に手をやる」、「機嫌が悪くなる」などの異変が見られます。このようなときは、お早めに耳鼻科を受診し、耳の病気が起こっていないか確かめるようにしましょう。

急性中耳炎になったときは、抗生剤や消炎剤をお渡ししますので、決められた時間に服用するようにしましょう。膿がたくさんたまっている場合には切開して、膿を出す処置をすることもあります。症状が治まっても、鼓膜の状態が元通りになるには日数がかかるので、通院が必要になること多くなります。見えない場所なのできちんと治るまで通院して確認することが大切です。

難聴

難聴は、周囲の音や声などがきちんと聞こえなくなる病気です。損傷の起こる部位などにより、伝音難聴、感音難聴などがあります。このうち伝音難聴は、主に中耳の異常によって起こるタイプです。中耳炎や耳垢などで起こることもありますし、中耳にある耳小骨の奇形や後天性障害などで起こることもあります。

一方、感音難聴は、内耳や聴神経の異常によって起こります。遺伝的な要因、胎児期における発達異常もあるため、まずは新生児期に必要な検査を受けるようお勧めいたします。これにより、早期に治療を開始できます。また、後天的要因としては、加齢、外傷、騒音、薬剤性、髄膜炎、聴神経の腫瘍などがあります。

滲出性中耳炎

鼓膜の奥に炎症が起こっている状態が続くことにより、中耳組織から染み出た液体が溜まっていく疾患です。痛みや発熱を伴う場合は、患者様や保護者の方が異変に築いて耳鼻科を受診し、適切な治療が為されますが、この疾患は痛みなどの自覚症状が見られないケースが少なくありません。

そのため、受診せずに放置してしまうケースが見られますが、滲出性中耳炎は就学児童が難聴となる最大の原因です。お子様の耳が聞こえにくいのではないかと感じられたときは、耳鼻科を受診して検査を受けておくようにしましょう。
鼓膜の奥にたまった液体が消失するために、長期間内服が必要になることも多いです。

慢性中耳炎

急性中耳炎の治療が不完全で治癒していなかった場合など、鼓膜に穴が開いたままになって慢性的な炎症が続いてしまう疾患です。鼓膜には再生力がありますので、通常は穴が閉じていくのですが、炎症が収まらない状態が続くことにより、再生が追い付かなくなり、慢性中耳炎となります。

耳の痛みや発熱はあまり見られませんが、鼓膜に穴が開いているので、外部の声や音がきちんと聞き取れず、難聴となることがあります。また、外から菌が入り込んでしまい、耳垂れを繰り返すこともあります。鼓膜や皮膚の一部が奥の方へと入り込むと、真珠腫という塊が出来て耳小骨を壊してしまうこともあります。

具体的な治療法は、軽度ならば中耳の粘膜の腫れや膿を取り除くため、抗菌薬を点耳したり、消炎剤を使用したりします。鼓膜の穴が大きいケースなどでは、鼓室形成術という手術を選択することもあります。中耳の病変組織を取り除き、中耳炎によって破壊された耳小骨を修復することによって、耳の機能回復を目指すのです。

突発性難聴

特に原因が見当たらないのに、ある日突然、耳が聞こえなくなる病気です。難聴と同時に、耳の閉塞感や耳鳴り、めまい、吐き気などを覚えることもあります。発症前に精神的・肉体的疲労やストレスが溜まっていることも多いため、これらとの連関性が指摘されていますが、詳しい原因は分かっていません。

治療にあたっては、発症から1週間以内の早めの受診がすすめられています。安静にして過ごすこともとても大切です。症状や生活環境によっては、入院加療が望ましいこともあります。治療が難しい面もありますが、早く治療を開始することで聴力の回復も早まる可能性が高いと言われています。

耳鳴症

耳鳴りとは、耳の周囲に特段の音源が無いにもかかわらず、ご本人にとっては音が鳴っているように感じられる状態です。聞こえる音は、高音域の「キーン」、「ピーン」というようなものから、低音域の「ザー」、「ゴー」など様々です。

治療にあたっては、まず原因を究明します。中耳炎やメニエール病、突発性難聴などが原因ならば、それぞれの病気の治療を行うことにより、耳鳴りも解消します。但し、特に原因が見当たらないケースも非常に多く見受けられます。耳鳴自体の原因ははっきりとは解明されていませんが、現在では中枢性に耳鳴が生じるといわれています。そのため、なかなか的確な治療が難しいこともあるのですが、十分な睡眠と休養、ストレス解消、食事の改善などによって症状が軽くなることも良くあります。

なお、耳鳴りが長く続く場合は、聴神経系の腫瘍などが原因のこともありますので、耳鼻咽喉科の専門医を受診するようお勧めいたします。